レバーレスコントローラーを作った話:設計
の続きです。
アケコンの性能に注力しよう!
いざ作るぞとなって、まず考えたことは
「アケコンとして劣化じゃないものにしたい!」と言うことですね。
どういうことかというと
「薄型でコンパクトだけど結局家では普通のアケコン使った方がいいよね。」ってならないようにしたいということですね。
そのために普通のアケコンに劣らないよう色々調整したりしました。それらについて書いていきますー。
と言っても、大型の筐体による安定感だとかはどうしようもないんですけどね。
あと、私はこういった電子工作?は初めてなのでそっちが最低限しかできないし、詳しい方がちゃんと記事書いてくれてますし、そっちは諦めてアケコンとしての性能にこだわっていこうと思いました。
大まかな設計
今回の薄型アケコンの大まかなつくりは、プリント基板を加工したアクリル板数枚で挟み込む形で作成されてます。
↑の物がプリント基板です。ここにアケコンのボタン内部のスイッチ部分だけを直接はんだでつなげることで配線のスペースを省くことができます。
この基板の上下をアクリル板で挟みます。
基板の設計自体はKiCadという基板の設計用のCADを使って作りました。
自分のために作るので自分の手のサイズ指の長さを図りつつ自分の押しやすいようにボタン位置等を決めます。ここらへん自作感あって良い
ここらへんの設計は初心者なのでこんなもんで。
【3Dモデル】
基板設計が出来たあたりでイメージを明確にするため、アクリル板がパーツに干渉しないかを確認するため、基板データを元にfusion360を使って3Dモデルを作成。
3Dモデルの編集とかも初めてでしたが複雑な造形もないので結構簡単。
そして完成したのがこちら
3Dモデルが完成するとなんかすごいグッときますね、現実味をおびてくる感じがして自分で作っていながらなんか感動しました(笑
大まかな設計が完了しましたが、途中で使うパーツを変えたりするたび調整をしてました。
パーツの選定
【基板】
使用基板は前述の通り「Raspberry Pi pico」を使用します。
なんてったて安いし小さくて薄型の邪魔になりません。現状PCで使うならこれ一択ってレベルです。
【ボタン】
ここからが本番です。
レバーレスでもっとも大事なのは言うまでもなくボタン!
少し前まではアケコンのボタンは三和かセイミツって感じでしたが、最近は様々なメーカーがボタンを出しています。
その中でも人気なのがメカニカルキーボードに使用されているキースイッチをつかったボタンです。
名前を上げると
「Gamer finger」や「Qanba Gravity」
等が有名で人気があるそうですね。
キースイッチには軸の色で色々性能が変わるのですが、その中でも反応が1番早くスイッチの反発が小さい「Cherry mx Speed Silver軸(通称:銀軸)」を使うことにしました。上記の「gamerfinger」でも使われいているものですね。
ですが、3Dモデルに並べてみたら筐体に対して高さがありボタンだけ飛び出すようになってしまうレベルで、これでは薄型の意味がなくなってしまうわ、高すぎて押しにくいわで断念。
調べるとちゃんと背の低いLow Profileキーと言うのがあり、銀軸のものもありました。
左が普通のサイズ、右がLow Profile
Low Profileがだいたい8.5mmほどで、7mmほど薄い。ええやん
50個セットしか販売してなかったですがこちらに決定。
あとはこれにボタンキャップをつけるのですが、「Gamer finger」と同じ形の差し込みなのでそれが手に入ればよかったのですが、キャップ部分だけでの販売ってしてなくて、先駆者様たちも3Dプリンタでの作成されていたので私もそれに倣うしかないかー、と思ったのですが、中国の大手通販サイト「AliExpress」で見つけました。
こちらも最近人気のアケコンメーカー「punk workshop」さんの販売してるオリジナル薄型ボタンのキャップ部分です。
このボタンは同じくLowProfileの銀軸を使ったボタンで普通のアケコンにも取り付けれる薄型のボタンですね。
送料考えても3Dプリンタ委託するより安かったのでこちらで決定!
海外からなので届くまでに3週間位かかったけど、設計にも時間かかったので特に問題はなかった。
これでボタンもOK!
かと言うと全然そんなことはなく、このままではただの「Gamer finger」や「punk workshop」さんの劣化ボタンです。と言うかただのキーボードのキーでありアケコンのボタンではないのです!これらをアケコンのボタンへと加工をしないといけません。
問題の説明前にここでちょっとメカニカルキースイッチの用語の「押下圧」「ストローク」「アクチュエーションポイント」について説明します。
「押下圧」
これは押し込むときの反発の強さ、数値が低いほど反発が弱く少しの力で押し込める。
「ストローク」
ボタンを通常の状態から底まで押すまでの長さ。
「アクチュエーションポイント」
スイッチが反応するまでの長さ、どれだけ押し込めば反応するか。短いほど敏感に反応する。
今回の銀軸(LowProfile)で言うと。
「押下圧」45cn
現行のキースイッチでは最も低反発
「ストローク」3.2mm
普通
「アクチュエーションポイント」1mm
こちらも現行のものでは最も短い
銀軸がアケコンのボタンとして評価されているのが、この「押下圧」と「アクチュエーションポイント」の低さでの反応の敏感さなのですね。
話を戻しまして、このままだと何が問題なのかというと
それは「ストローク」です。
キースイッチは普通の三和等のボタンと比べてストロークがかなり長いのです。例えば三和ボタンで2.3mmくらいでかつアクチュエーションポイントも同じくらい。
ストロークの長さがなぜ問題になってくるかというと、ストロークの長さが3.2mmでアクチュエーションポイントが1mmと言うことは、最下まで押し込んでしまった場合2.2mm分の無駄が出ます、これと反発の弱さが合わさって連打性がかなり低くなるのと、ボタンの反応している時間が長くなりコマンド入力に影響が出ます。
右手のボタンならそこまで影響無いかもしれませんが、レバーレスではボタンで方向入力する都合上、単一方向を入力する場合しっかり単体でボタンを押さないと反応しないので、ボタン離れが悪いとすばやいコマンド入力ができなくなってしまうのですね。
解決方法はいくつがあるのですが、私が取った方法は単純で、キースイッチとボタンキャップの間にゴムリングを噛ませて物理的に押下できる距離に制限をかけるという方法です。
私の場合はボタンキャップの構造を鑑みて3mm分制限する必要があったので1.5mm厚のゴムリングを2つつけました。
そしてできたのがこちら
左が何もなし 右がリング噛ませ
ストロークを1.2〜1.3mmに制限することに成功しました!しかも、ゴムリングを噛ませたおかげでボタン音がかなり抑えられ静音ボタンとなりました!
やったぜ!
これで本当にボタンはOK!最高レベルのものになったと思います。
あと、オプション系のボタンは小さすぎると押しにくいかな?と思い12mm×12mmの物を採用しましたがこれはちょっといまいちだったかもしれません。
頻繁に使わないのでそこまで気にしてませんが、次の改善項目ですね。
【サイズ】
あとは最後に全体のサイズの話です。
完成品のサイズ
縦120mm
横230mm
高さ 本体のみ11.8mm ボタン含め16mm
重要なのは本体の薄さについてです。
これは「薄型レバーレスだから薄く作りたい」のではなくボタンの押しやすさを考えたときにできる限り薄くしたほうがいいからなのですね。
何故かというと、小型コンパクトな造形上、手を置く場所が本体になく、手前に置いている台などに置く必要が出るため、厚みが出ると手の位置とボタンの高さにズレが出てボタンが押しにくくなってしまうからなのです。
今回の設計だと自身の手で試した限りではボタン含めの高さが20mm以上になると右手親指のボタンを押しにくくなりました。
本体だけの厚みは特に問題なかったのですが、薄く作る上では留め具を何にするかだけは少し頭を抱えました。普通にネジとナットで止めるとその分厚みが増してしまうのでダメ。薄いアクリル板を何枚も挟み込む形をとる構造上、アクリル板を削ってナットを埋め込むのも強度的にダメ。となったのですがホムセン見てたらリベットナットのかなり小型の物も見つけて(サイズが微妙に合わなかったので結局アマゾンで購入した)それも無事解決!
薄型ネジも見つけて、留め具上下合わせても0.2mmと言う薄さで大満足!
これで完成!!
【使用感】
なじむ 実に!なじむ フハハハハー
といった感じですな。自分で指の位置まで選んでるのですから当たり前ですが。非常に良い、ボタンの改造はかなり効いてますね、今まで三和ボタンしか使ってなかったので違和感はありますがメチャクチャ軽い!コマンド入力も素早くできる!これはいいものだぁ…
薄さも想定通りで問題なし!また作るとしてもボタン周りはこれでいいかな。
【感想】
完成した感想ですが(いる
くぅ~疲れましたwこれにて完成です!(古い
ものを作るのは結構好きな私ですが、今回は初めてのことが多くてすっごく楽しかったですねぇ。
格ゲーのために作るはずだったのに、知らないことだらけで勉強とパーツ選定に時間かかりすぎて1ヶ月間くらいろくに格ゲーできないという本末転倒な感じになりましたが納得いくものができてよかった。
こういうのが自作の良いところですね。思ったより簡単だった?気もするような?感じなので?みなさんもレッツチャレンジ!
って感じでまたよろしう